一人暮らしのエアコンの電気代はいくら?高額になる理由と効果的な節電方法を紹介

2022年4月15日

1人暮らしのエアコンのある生活

 これから一人暮らしを始める人にとって、今後の生活での電気代は特に気にする内容だと思います。特にエアコンは電気代が高い家電の一つ。本記事では一人暮らしにおけるエアコンの電気代の見積もり方を説明します。またエアコンの動作の仕組みを踏まえて、電気代が高くなる要因や効果的な節電方法も紹介しましょう。

エアコンの電気代の見積もり方

 エアコンの消費電力には稼働時間・室温と外気温・エアコンの型番・家の断熱性など、さまざまな要素が絡むため、正確に金額を見積もるのは簡単ではありません。そのため、おおよその消費電力から電気代を見積もる方法について説明します。

電気代の計算式

 一般的な電化製品の電気代の計算式は次のようになります。式にある「電気料金単価」とは、全国家庭電気製品公正取引協議会による電力料金の目安単価であり、その金額は27円/kWh(税込み)1。主要な電力会社10社の平均値となりますが、実際の金額は電力会社との契約プランによって変わるため、気になる方はご確認ください。

電気代の計算

消費電力(W)×使用時間(h)×電気料金単価(円/Wh)=電気代(円)

 エアコンの消費電力は各機器の取扱説明書に記載されています。説明書を読む際に、「定格能力」と「定格消費電力」が同じW(ワット)という単位で記載されていることに注意してください。定格能力はエアコンの冷暖房で移動できる熱量のこと。一方で定格消費電力はエアコンが消費する電気量のことで、電気代の計算にはこちらを使用します。

夏の一人暮らしの電気代

 一人暮らし向けということで、例として6畳用のエアコン「RAS-AJ22J」(日立製)2で1ヵ月の電気代を見積もります。なお消費電力は2013年度のJIS規格に基づいており3、外気温度は東京がモデルです。

エアコン型番:RAS-AJ22J(日立製)
定格消費電力(冷房):580W(190W~820W)
冷房の目安:10m^2(木造南向き)、15m^2(鉄筋アパート南向き)
通年エネルギー消費効率(APF):5.8
設定温度(冷房):27度
使用時間:8時間(6時~8時、18時~24時)

 当然ながら使用時間は本人の生活リズムによって変わります。ここでは一人暮らしの学生や社会人をイメージで日中は自宅にいない設定にしました。1日のエアコンの電気代は以下のようになります。

580W×8h×0.027円/Wh=125.3円

 1日で125.3円、1ヵ月(30日間)では3758円です。本記事では夏ということで冷房時の電気代を計算しましたが、エアコンの消費電力は暖房と冷房で異なるため取扱説明書を確認してみてください。なお家族と住んでいる場合など、6畳用より大きいエアコンを使用していれば定格消費電力も大きくなるでしょう。

エアコンの仕組みと電気代が高くなる要因

 エアコンは家庭用の電化製品のなかでも電気代が高い部類に入りますが、なぜそれだけの消費電力が大きくなるのかご存じでしょうか。エアコンが冷暖房を行なう仕組みを見てみましょう。

エアコンが動作する仕組み

 エアコンは部屋の中にある「室内機」と屋外に設置する「室外機」の2つで1セットの製品です。室内機と室外機はパイプでつながれており、そのなかでは冷媒と呼ばれるガスが移動します。熱は温度の高い場所から低い場所へ移動する性質があり、冷媒は室内と室外で熱を交換する役割を担っているのです。

エアコンの仕組み

 上図を参考に暖房の場合について説明しましょう。パイプを通る白い矢印が冷媒の流れを表しています。エアコンは圧縮機(コンプレッサー)の働きで、気体状態の冷媒に圧力をかけて高温高圧に。次に室内機の内部にある熱交換機で室内の冷たい空気と触れることにより、冷媒が気体から液体に変化。このとき生じる凝縮熱が室内の空気に与えられて温風となり、熱を放出します。

 次に熱を放出して冷えた冷媒は室外機へと送られ、パイプ内の膨張弁を通ることで圧力が下がります。室外機の内部にある熱交換機で高温の外気と触れ、冷媒は液体から気体へ蒸発。このとき気化熱を周囲から受け取るため冷媒は熱を吸収します。気体となった冷媒は圧縮機を通ることで再び高温高圧に。

このサイクルを繰り返すことでエアコンは暖房として動作しています。逆に冷房時は室内から室外へ熱を移動させる動作を行なっています。

消費電力は圧縮機で決まる

 エアコンで電力を消費する要因は圧縮機であり、エアコンの消費電力全体の約8割 4を占めています。つまりエアコンの電気代が高いのは、圧縮機で室内と室外の熱を交換するのに大きなエネルギーを必要とするため。電気代の削減を考えるなら、圧縮機をなるべく動作させずに室内の温度を維持する方法を検討しなければなりません。

 例えばエアコンの設定温度が室内温度とほぼ変わらなければ、圧縮機を動作させる必要がないため消費電力も小さくなります。一方で設定温度と室内温度の差が大きければ、それだけ圧縮機を高負荷で動作させることになり、消費電力も増加します。

エアコンつけっぱなし、必要なときだけつける場合の比較

 エアコンを24時間つけっぱなしにした場合と、必要なときだけつける場合で、どちらが電気代を安くできるでしょうか。結論としてはケースバイケースなのですが、圧縮機の動作の観点で考察してみましょう。

温度差が大きいほど圧縮機が高負荷で動作

 エアコンの動作時間の問題は、「どちらの動作のほうがエアコンの圧縮機に負荷をかけずに室内温度を維持できるか」という問題に置き換えられます。エアコンは圧縮機が高負荷で動作する時間が長いほど電気代が増加。設定温度と室内温度の差が大きい場合は圧縮機が高負荷で動作し、差が小さい場合は低負荷で動作し続けながら設定温度を維持します。

 一般的にエアコンの消費電力が大きいのは起動時。もう少し詳しくいうと、起動時は設定温度と室内温度の差が大きいことが多いため、圧縮機が高負荷で動作し消費電力が大きくなります。24時間つけっぱなしの場合は温度差が少なく圧縮機の負荷は小さいですが、稼働時間が長くなれば消費電力は増加します。

オンオフの頻度と室温をどれだけ維持できるかで決まる

 エアコンを24時間つけっぱなしの場合と必要なときだけつける場合の比較は、エアコンのオンオフの頻度と、エアコンを消した状態で室温をどれだけ維持できるかで決まります。つけっぱなしの場合は基本的には設定温度を維持するだけなので圧縮機は低負荷状態。一方で必要なときだけつける場合は、設定温度と室内温度の差がどれだけあるかで圧縮機の負荷が変わります。

 夏や冬などで室内温度と室外温度の差が大きい場合、エアコンを消すとすぐに温度が変動してしまいます。そのためエアコン動作時に圧縮機が高負荷かつ長時間動作することが多くなるでしょう。頻繁にエアコンをオンオフすれば、それだけ圧縮機の負荷が大きくなり電気代も増加します。ただし24時間運転の場合は低負荷といえども圧縮機は動き続けているため、オンオフの頻度が少ないなら必要時のみ電源をつけると電気代が安価に。

 したがって室外温度、エアコンのオンオフ頻度がどのくらいか、家の断熱性能など複数の要因が絡んできます。そのため最終的には自分の家のエアコンで、ご自身の生活スタイルに合わせて確認するのが一番です。

エアコンの運転モードの違いによる比較

 エアコンには冷房や暖房、除湿といった機能がありますが、機能によって電気代にどう影響するのか説明します。

冷房と暖房の電気代の違い

 エアコンは冷房よりも暖房の電気代が高額になることが多いでしょう。その理由は室内温度と室外温度の差にあります。2021年における東京都の8月と2月の平均気温 5は以下のとおりです。

8月平均気温:27.4度
2月平均気温:8.5度

 これに対し、人間が快適に感じる温度の目安 6は以下です。

夏:25度~28度
冬:17度~22度

 東京の8月は日中に30度を超えることが多いため、エアコンを使用している人が大半でしょうが、平均温度で見れば快適な温度の範囲に入っています。それに対して2月の温度は9度~14度の差があります。つまり冬の方が室内温度と室外温度の差が大きくなるため、エアコンの電気代が大きくなります。

冷房と除湿の電気代の違い

 部屋の室温が高く暑苦しいときは、素直に冷房で室温を下げる場合と、除湿機能を使って湿度のみ下げる場合があります。冷房を使用した場合も部屋の湿度が下がるのですが、その理屈を説明しましょう。

 室内機の内部には熱交換用のフィンがあり、冷房運転時には室内の空気が冷えたフィンに触れることで冷風に変えています。このときフィンに触れた空気が冷やされて結露が発生し、水滴が生じます。発生した水は配管を通って外部に放出されるため室内の湿度が低下します。

 エアコンの除湿機能もこの方式を利用していますが、さらに二つの方式 7に分けられます。「弱冷房方式」は弱冷房状態にすることで温度を下げすぎないようにしながら除湿を行ないます。弱冷房運転を行なうため室温が下がってしまいますが、通常の冷房よりは電気代が抑えられます。もう一つの方式は「再熱除湿方式」と呼ばれ、冷房と暖房を交互にかけることで室温の低下を防ぎます。しかし通常の冷房よりも電気代が大きくなってしまいます。

 電気代を気にするのであれば、弱冷房方式で除湿運転することをおすすめします。ご自宅のエアコンがどちらの方式を利用しているかはカタログや取扱説明書を確認してください。

エアコンの電気代節約方法

 エアコンの電気代をできるだけ節約するための方法を紹介します。エアコンの消費電力の一番の原因である、圧縮機をできるだけ動作させないにはどうすべきかを考えてみましょう。

エアコンの電気代節約

自動運転の機能を使う

 自動運転の機能を簡単に説明すると、エアコンに内蔵している温度センサーで室温を読みとって圧縮機の動作を調整します。設定温度との差が大きい場合は圧縮機を高負荷で動かし、差が小さくなるにつれて圧縮機の負荷を下げていき、最終的には動作を停止。

 手動で風量調整を行なう場合は一定の風量で動作し続けます。電気代を気にして弱運転にすると設定温度に達するまで時間がかかってしまう難点も。それに比べて自動運転の場合は室温と設定温度との差を見ながら風量の強弱を細かく調整できるため、電気代を抑えられます。

サーキュレーターや扇風機を使う

 暖かい空気は上部に、冷たい空気は下部にたまりやすいという性質があります。部屋の上部に設置されるエアコンは内部の温度センサーで室温を読み取るため、冬は上部の暖かい空気の温度を読み取って動作を停止してしまうことも。

 サーキュレーターや扇風機を使って部屋の空気を混ぜることで、部屋の室内温度を均一にしましょう。そうすれば必要以上にエアコンの設定温度を上げる必要がないため電気代の削減になります。サーキュレーターや扇風機の定格消費電力は数十W程度とエアコンの約1/10なので、電気代への影響は少ないと考えてよいでしょう。

定期的にフィルター掃除を行なう

 エアコンのフィルターにホコリがついていると吸気や排気の風量が減少してしまい、冷暖房効率が低下します。その場合にエアコンは効率を維持しようと不必要に高負荷運転してしまい、消費電力の増加の原因に。

 フィルターは定期的に掃除してホコリを落としておきましょう。また忘れがちなのが室外機。こちらも室内機と同様に定期的に清掃することをおすすめします。ほうきで掃いて表面のホコリを落とし、歯ブラシなどで網目の中のごみも取り除きましょう。

室外機の周りに物を置かない

 室外機の目の前に物が置かれていたりすると、室外機の吸気や排気の邪魔になってしまいます。上述した室内機のホコリの話と同様に、風量減少によって冷暖房効率が低下。その結果エアコンが高負荷運転して消費電力の増加を引き起こします。

 また夏の場合は室外機に直射日光が当たらないように注意しましょう。直射日光で室外機の温度が上がってしまえば室内機から送られてきた熱を十分に廃棄できず、効率低下を引き起こします。

窓の断熱をする

 室内の温度は常に外の温度の影響を受けています。特に影響が大きいのが窓であり、窓を通して室内と室外の熱の交換が行なわれます。簡単にできる方法としては、夏の間はなるべくカーテンを閉めて直射日光を遮るようにするとよいでしょう。

 夏と冬の両方に効果があるのは窓に断熱シートを貼ること。ただし窓ガラスによっては断熱シートNGの場合もあり、あらかじめ確認しておきましょう。透明で外が見えるタイプと半透明で見えにくくなるタイプなど、種類もいくつかあります。断熱効果が高いものほど価格も上がりますが、電気代の削減には効果的です。

まとめ

 一人暮らしのエアコンの電気代について、本記事でのモデルケースでは1日で125.3円、1ヵ月(30日間)では3758円となりました。エアコンの消費電力の一番の原因は圧縮機であり、いかに圧縮機を動作させないようにするかが節電のポイントです。

 節電方法としては自動運転や弱冷房方式の除湿運転を行なう、サーキュレーターや扇風機で空気を循環させる、室内機と室外機のフィルター掃除をする、窓の断熱をするなどを挙げました。特にエアコンの運転方法については今からすぐ実行できるので、ぜひ覚えておいてください。

Footnotes

  1. 公益社団法人 全国家庭電気製品公平取引協議会 「電力料金の目安単価」の改定に関する件(2014)
  2. 日立ルームエアコン(RAS-AJ22J)取扱説明書
  3.  一般社団法人 日本冷凍空調工業会 家庭用エアコン
  4. ダイキン工業株式会社:ダイキンの空気の技術 圧縮機とは?
  5. 気象庁:過去の気象データ検索 東京2021年
  6. NURO戸建て:人間が快適に感じる冷房、暖房の温度は何度?無理なく節電温度にするコツ
  7. 日立グローバルライフソリューションズ株式会社:除湿機能が「再熱除湿方式」か「弱冷房方式」かを知りたいです。