環境保全を考えよう!節電のメリット5つを紹介します

2022年6月21日

広い地域での節電

 節電することによるメリットには何があるでしょうか。誰しもがすぐ思いつくのは電気代の節約でしょう。しかし、それ以外にも節電にはさまざまなメリットが存在します。本記事では節電におけるメリットを個人、地域、地球全体の3つの視点から解説したいと思います。

電気代の節約ができる

 個人レベルにおける節電の一番のメリットは、電気代の節約です。節電をはじめた人の大半もこれが理由ではないでしょうか。家庭内において電気代が大きい要因について見ていきます。

電気代の多い機器

家庭のなかで電気をたくさん使っている電化製品は?
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

 家庭内における、消費電力量の多い電化製品について紹介しましょう。上図の円グラフを見ると加熱・冷却機器が約半分を占めています。電化製品ごとのトップ5は以下のとおりです。

1位:電気冷蔵庫 14.2%

2位:照明器具  13.4%

3位:テレビ    8.9%

4位:エアコン   7.4%

5位:電気温水器  5.4%

 上位にある電気冷蔵庫、照明器具、テレビの3種は、季節と関係なく1年を通して使用し続ける機器です。さらに1日の間でも使用時間が長い場合が多いでしょう。電気代の高いイメージのあるエアコンは4位と低めです。暖房にエアコンではなく、灯油やガスを使用している家庭もあるためだと考えられます。

 消費電力が大きいものから優先的に対策を考えることで、効率的に節電できます。冷蔵庫なら食材を詰め込みすぎず、ドアの開閉頻度を減らす。照明器具なら使っていない場所の照明を切る、日中はカーテンを開けて日光を取り入れる。日々の生活習慣を少し変えるだけでも、1年を通してみれば大きな節約になります。

エネルギー消費の多い用途

家庭内エネルギー消費
(左)世帯当たりの用途別エネルギー消費
(右)家庭部門におけるエネルギー源別消費
出典)経済産業省 資源エネルギー庁:エネルギー白書2021(https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2021/pdf/)より

 電力以外のガス、灯油なども含めたエネルギー消費の多い用途を確認しましょう。家庭内のエネルギー源別消費では電気の割合が約半分、ガスと灯油が残りの半分を占めています。用途別では給油や暖房、動力(冷蔵庫や洗濯機など)、照明の割合が多くなっています。

 特に暖房が多いことに注目してください。消費電力の多い順のトップ5には4位にエアコンが入っていましたが、それでも7.4%です。エネルギー全体では暖房が24.7%を占めていますが、ガスや灯油で暖房機器を使用している家庭があるためと考えられます。つまり、暖房器具でエアコンのみ使用している家庭なら、エアコンの消費電力は7.4%よりずっと大きくなるでしょう。ガスや灯油を多く使用している家庭では、電気・ガス・灯油といったエネルギー全体で消費量を抑えることが重要です。

 ちなみに冷房よりも暖房の消費エネルギーが大きい原因は、屋内と屋外の温度差。人が快適に感じる温度と屋外の平均気温を比較すると、夏よりも冬のほうが、温度差が大きくなります。暖房や冷房機器を使って温度差がなくなるまで室温を変えようとすると、冬の温度差が大きいために暖房のエネルギー消費量が大きいのです。

生活習慣が良くなる

 個人レベルにおける節電のメリットとして、生活習慣が良くなることも挙げられます。

エアコンの節約で冷房病の対策に

 エアコンによる冷房病が夏の冷え性の引き金となる場合もあります1。エアコンのきいた部屋に長時間いると、体温を逃がさないよう血管を収縮させ、血流が悪化して冷えなどの症状が発生。その状態が続くと自律神経がダメージを受けて体温調整ができなくなります。高温の屋外に外出した際には急激な温度差に体がついていけず、全身のだるさや疲れやすさ、さらには夏バテの原因となることもあります。

 エアコンの温度を下げすぎないよう注意しましょう。25度~28度が適正ではあるものの、頻繁に外出する場合は「外気温マイナス3~4度」が目安。また冷房に頼らず除湿機能を使うだけでも快適に過ごせる場合もあります。除湿機能は「弱冷房方式」と「再熱除湿方式」がありますが、電気代を抑えられる「弱冷房方式」を使用することをおすすめします。

新しい生活習慣が身に付く

 テレビやインターネットを見る時間を減らすことで、読書や運動など他のことに時間を使えるようになります。単に電気を使用する時間を減らすだけでなく、その時間で今度から何をするかを意識してみてはいかがでしょうか。節電という理由だけでは、どうしても「やりたいことを我慢する」というネガティブな動機付けになってしまいます。新しい習慣や趣味など、ポジティブな理由を見つけることで、節電も長続きするでしょう。

 外の明るさに合わせた生活リズムにすることもおすすめです。早朝の明るい時間帯から活動することで照明の節約になりますし、早寝早起きの習慣が身に付きます。集中力の高い朝の時間帯を有効に活用するのもよいでしょう。節電を考えると休日は外出することが一番。家にいない時間が長いほど照明や暖房、冷房の節約になります。

地域の電力不足、大規模停電の発生を防ぐ

地域の電力不足、大規模停電の発生を防ぐ

 ここからは少し視野を広げて、地域レベルでのメリットを考えてみましょう。節電を行なうことでお住いの地域の電力不足を防ぐことにつながります。

電力は需要と供給のバランスが大事

 電気は貯蔵することが難しいエネルギー。蓄電池(バッテリー)などの貯蔵する方法はあるものの、いったん電気を別のエネルギーに変換して保存することになります。その際に変換時の電力ロスが大きく、結果として電力のコストも高くついてしまう、という問題があります 2

 電力を貯蔵する蓄電池の技術の一つに「NAS電池」があります3 。NAS電池はナトリウム(Na)と硫黄(S)からなる電池のことで、電気を化学エネルギーに変換して貯蔵可能。一般的な電池よりエネルギーの大きさ、寿命は優れています。しかし設備が大型のため、大量に電気を使う工場や事業所への普及が見込まれています。

 発電所で作られた電気はそのまま需要家へ送電することが基本です。そのため電力会社は需要の大きい日中に大量に発電し、深夜は発電量を減らすなど、需要に応じた発電量の調整を行なっています。

電力消費のピーク時には大規模停電の恐れ

 電力需要の変動に応じて供給量を調整するため、夏や冬の需要が増大する時期には供給量が追い付かなくなることも。その際は地域一帯で大規模停電が発生する恐れがあります。近年も電力需要の見通しが厳しい場合に、企業や家庭に向けて電力会社から節電の依頼が発表されました。

 あらかじめ十分な量の電気を発電しておければよいのですが、電力需要の予測は気候変動なども影響するため困難であり、使われずに余った電気は無駄になることに。また電力会社の設備はピーク需要に合わせて建設されています。そのため電力需要の変動が大きいと設備の利用率が低下し、コストつまり電気代が高くなる要因となります4

 電力消費の大きい夏は、消費量がピークとなる昼間15時頃と、消費が少ない朝5時頃とでは約2倍の差があるのです 5。節電を心がけることで消費のピーク量を抑え、電力需要が一定になれば、電力の供給も安定しコスト削減につながります。

地球温暖化を防ぐ

 さらに視野を広げて、地球全体でみた場合における節電のメリットを考えてみましょう。地球規模でのメリットは地球温暖化を防げることです。

温室効果ガスを減らす

 地球温暖化を引き起こす要因は、CO2、メタン、一酸化二窒素などに含まれている温室効果ガス。温室効果ガスは太陽から地球に与えられる熱エネルギーのうち、大気や地表での反射分のエネルギーを吸収することで、地球を暖かく保つ働きがあります6

日本における温室効果ガス排出量の割合
出典)温室効果ガスインベントリオフィス/
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(https://www.jccca.org/)より

 日本における温室効果ガスの9割がCO2。特に日本は火力発電の割合が多く、発電時に使用する石油や石炭などの化石燃料から大量にCO2が発生します。またCO2を吸収してくれる森林の伐採も進めてきたことで、大気中のCO2は増え続けているのです。

 2020年10月に日本政府は、大気へのCO2排出量と大気からの吸収量を均衡させる、「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました7 。日本だけでなく、世界の120以上の国と地域で、2050年にカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げています。

地球温暖化による問題

 温室効果ガスが引き起こす地球温暖化の問題を3つ紹介しましょう。

 1つ目は海面水位の上昇。温暖化による海水の体積膨張、南極や北極周辺の氷河が溶けて海に流れ込むことが原因です。海岸が浸食されて居住できる土地が減ること、沿岸地域での高潮の被害などが懸念されています。

 2つ目は気象異常。豪雨や干ばつなど、地域によって極端な気象異常が起こると予想されています。また海水面の上昇が影響して熱帯低気圧が発達し、台風の数も増えることに。温室効果ガス自体の影響で地球上の気温も上昇することから、作物の栽培に適した地域が変わってしまうといった恐れもあります。

 3つ目は生態系への悪影響。これまで説明した、温暖化や海面水位の上昇、気象異常などが原因で、地球上の動植物の生息環境が破壊されてしまいます。その結果は人間自身にも被害がおよぶでしょう。例えば感染症を媒介する蚊の生息分布や、渡り鳥の飛行経路が変わり、これまで一部地域のみで流行していた感染症が世界中に拡大する恐れがあります。

電気、エネルギーに関する知識が増える

電気、エネルギーに関する知識が増える

 最後に個人レベルのメリットとして、電気やエネルギー全般の知識が増えることを取り上げます。

個人、地域、地球レベルで考える

 ここまで見てきたように、節電のメリットは単に電気代の節約だけに留まりません。個人、地域、地球全体という複数の視点においてそれぞれメリットが存在します。

 日々のニュースでも、電力需要の状況やカーボンニュートラルに関することなど、電気やエネルギーに関する話題が多く登場します。地球レベルの話になると、なかなか自分ごととして考えにくいものです。それでも普段から節電に積極的に取り組んでいると関心が持てるようになるでしょう。

電気の使い方を考える

 普段の生活のなかで電気の使い方を見直すきっかけにもなるでしょう。手っ取り早く節電するなら、使っていない照明を消すなどの使用時間の短縮、エアコンの設定温度を必要以上に上げ下げしないなどの負荷の低減が考えられます。

 また使用している電化製品が古くなっている場合は、省エネ性能の向上した新しい機器に買い替えるのもよいでしょう。また使い方を考えるだけでなく、発電についても考えてみてはどうでしょうか。一般家庭で導入できるものとして、太陽光発電や太陽熱温水器、燃料電池(エネファーム)などがあります。

まとめ

 節電による個人のメリットは電気代節約と生活習慣が良くなること。日中の活動を増やせば時間を有効活用できます。地域レベルのメリットは、電力消費のピークシフトを行なうことで電力需要の変動を抑え、大規模停電を防ぐことにつながります。また地球全体で見た場合は、温室効果ガスの削減により地球温暖化を防げるというメリットがあります。

 電気やエネルギーに関する知識が増えれば、日々のニュースに関心が持てるようになり、普段の生活のなかでの電気の使い方を見直すきっかけにもなるでしょう。

Footnotes

  1. オムロン ヘルスケア株式会社:vol.13 夏の体調管理は「冷房病対策」から
  2. 一般社団法人 電気学会:公開シンポジウム「電気はどうやって運ばれるの? -大停電を防ぐには-」質問回答集
  3. 日本科学未来館:質問: 電力は貯められないの?
  4. 電気事業連合会:電力需要の負荷平準化
  5. 電気事業連合会:電気事業のデータベース a-電力需給
  6. 関西電力グループ:【図解】地球温暖化のメカニズムは?原因や将来の影響をわかりやすく解説
  7. 環境省:脱炭素ポータル カーボンニュートラルとは